The reason of love








「ふぅ…此処ってどこなの…?」


家が立ち並ぶ住宅街で、リョーマは困り果てていた。


「あんのクソ親父〜……!!!」


それは今から1時間程前の事………


「おい、リョーマ。煙草買ってきてくれ」

「ヤだよ。自分で行けよな。大体未成年が煙草買うのは問題だろ!」

「煙草屋のババアのとこなら平気だよ、俺のお得意先だしな♪…なんなら、テニスで勝負すっか?」


いつもの挑発。普段なら絶対にのらないに、この日に限って…


「いーよ、早くやろう!」


それであっさり負けてしまったわけで…

現在煙草の買出し中。

何故道に迷っているかというと………


「あ〜もう!何でいつも歩く道路が工事中なんだよ?!」


と、いうわけで…適当に道を歩いて自販機を探していたら迷ってしまったのだった。


「本当に、何処なんだろ?…あ、この辺ってもしかして…?」


勢い良く走り出すと、見た事のある家が目に入る。


「あ〜やっぱり…。不二先輩の家の近くだったんだ…」


週末になるとよく遊びに来るため、道を覚えていたのだった。


「不二先輩の家って、かなり遠いじゃん。気付かない内にそんなに歩いてたんだ……」


(…もしかしたら此処に向かってたのかも…)


自分の心を嘲笑う。そんなわけないじゃん、と思いながらも、自然と玄関の前に立つ。


「居るのかな…。ってか、何やってんだ?俺…」


ハッと気付いた時にはもう遅く、呼び鈴を鳴らしてしまっていた。


「はいはい…たくっ、誰だよ」


ガチャリと扉が開くと、お互いに驚いてしまった。

目の前に、意外な人物が立っていたから。


「あっ…え、越前リョーマ…?」

「ゆ、裕太ぁ?何で…?」


リョーマのその言葉に、裕太は心外そうに言葉を吐き出す。


「何で居るかって?ここは兄貴だけの家じゃないぜ?」

「じゃなくてっ!寮はどうしたの…?」

「あぁ、今夜は皆出掛けるからって、留守番任された」

「ふ〜ん、じゃあ不二先輩居ないんだ…?」


ちょっと残念に思う。不二が居ればゆっくりしていく事が出来たからだ。


「何だよ、兄貴に用があったのか…」

「別にそういうわけじゃないけどさ、……っていうか、俺がココに寄るとしたら不二先輩しか理由なくない?」

「そ、それもそうだけどよ…」


ちょっと戸惑い気味の裕太に疑問を感じながらも、リョーマは気にせず言葉を繋ぐ。


「あのさ・・・歩いてたら疲れちゃって。少し休んでっていい?」

「あ、あぁ。構わないぜ、入れよ」


お言葉に甘えて…と家に入ると、リビングに案内される。


「そこのソファーに座れよ。今飲む物出すから」

「あ、うん。ありがとう」


不二家の大きめのソファーはとても座り心地が良く、リョーマの気分を良くするのだった。


「ほら…ファンタが好きなんだろ?」

「ありがと、よく知ってるね?」


出されたファンタを飲みながら、何気なく訊いてみる。


「兄貴がうっさいんだよ…。何かある度にお前の話するんだぜ?…付き合ってんのか?」


裕太の台詞に焦ったリョーマは、思いっきり噴出してしまう。


「かはっ!…ゲホ、ゲホ」

「お、おい!大丈夫か?」

「ん、…平気」


その言葉に安心すると、裕太は零れた液体を拭き取るのだった。


「で?どうなんだよ」

「何でそういう事言うわけ?そんなわけないじゃん…」

「でもお前、休みの日は必ずウチに来てんだろ?」

「…それも不二先輩?」

「ん?あぁ、そうだけど?」


(不二先輩ってば…!余計な事ばっかり言うんだから!!!)


「別に、好きだから会いに来てるわけじゃないよ」

「そうか…。良かった」

「え?何か言った?」


小声で呟いた言葉が危うく聞かれそうになって、裕太はドキッとする。


「いや!何も!…そうだ、俺の部屋でゲームやるか?結構面白いのあると思うぞ」

「え?ゲーム?やるやるv」


無邪気に笑うリョーマに、裕太は溜め息を吐く。


(ったく…。こんなに無防備だから、兄貴に狙われるんだよ)


不謹慎な自分の気持ちに驚き、立ち止まる。


「裕太?早く行こうよ???」

「ん、あぁ…」


(はぁ…、俺は一体何を考えてるんだ……)
















GAME OVER!!

たった今敵キャラの必殺技が決まり、何度目かのゲームオーバーの文字を見て、リョーマは苦々しくAGAINのボタンを押す。


「あぁ!コイツ強すぎだよ?!本当に勝てるの?」


少々ヒステリックになっているリョーマを後ろから眺めらがら、裕太は苦笑する。


「リョーマ、戦闘の時に技ポイント使いすぎなんだよ。もっとアイテム使ったら楽だぜ?」

「あ、そっか。アイテム使ってなかった…」


案外素直にアドバイスを聞くリョーマに、裕太は珍しそうに声を掛ける。


「リョーマって結構素直なんだな…」

「俺?全然。天邪鬼だし?」


テレビ画面に再び現れる敵キャラに、リョーマの目が真剣になる。


「そうか?俺相手だと素直だとか?」


もちろん裕太は冗談のつもりで言った台詞だった。しかしリョーマはというと…


「な、何でそう思うわけ?!俺、何か態度可笑しかった?!!」


コントローラーを手放して、リョーマは裕太に詰め寄る。


「い、いや…、ただ冗談で言っただけなんだけど?」


リョーマの剣幕に驚いた裕太は身を引いてしまう。


「そ、そっか…。俺、何か可笑しかったのかと思った…」


心底安心したように微笑むリョーマを見ると、裕太は自分の鼓動の早さに驚く。


(な、なんだよ…。男の笑顔に見惚れるなんて…、俺って『そっち系』大丈夫だったっけ?)


「裕太?どうしたの…固まってるよ?」


心配そうな声に気付き、顔を上げる。目の前に居る美しい少年を、今更ながらに『綺麗』だと思う。


「なぁ…お前って好きな奴とか居るのか?」

「何?唐突だね…。いるけどさ…」


僅かながらに、ショックを受ける。恋を自覚した途端に振られるなんて…


「そっか…、そいつは幸せ者だな…」


裕太の言葉に、リョーマは明らかに不機嫌な顔をする。


「その人はっ、俺がいっつも休日自宅に行くのに帰ってないし…!」


(えっ?今なんて言った……?)


「俺がこうして気持ちを伝えようとしても気付かないような鈍い人だし!」


(まさか…本当に…?)


「それ以前に俺の事なんとも思ってない人だもん!俺が好きでいたって幸せ者でもなんでもない!!!」


叫び終わると、裕太は部屋から逃げ出そうとするリョーマを、自然と抱き締めていた。


「悪かった…。まさか、兄貴じゃなくて俺を見ててくれてたなんて思わなくて…」

「ば、か…裕太。こんな事にまで、コンプレックス抱かないでよ……」


リョーマを振り向かせ、今度は正面から抱き締める。直に感じるリョーマの体温と鼓動に、自分を重ねるように…


「お前、俺が帰って来るまでこの家に足運ぶつもりだったのか?」

「うん…。だってルドルフに行ったら迷惑だろうから…」

「迷惑じゃねぇけどよ……ただ、」

「ただ?」


裕太はルドルフの面々(観月、木更津、赤澤)を思い浮かべてゾッとする。

もしあの人達にリョーマが見つかったら、間違いなく喰われるだろう。


「ただ、懸命な判断だったと思うぜ?」

「何ソレ?訳分かんないよ…」


混乱しているリョーマがあまりに可愛くて、微笑んでしまう。


「分かんなくていい…。今度から会う時は迎えに行くから、もうこの家には一人で来るなよ?」

「うん、分かった。でも何で?」

「兄貴が危険だからな…」



「誰が危険なの?裕太v」



「あ、兄貴?!!今日は帰って来ないはずじゃ…」


怪しいまでに慌てる裕太に、不二はニッコリと笑う。


「うん、そのつもりだったんだけどね?・・・何だかリョーマ君が来てる気がしてさvvv」


裕太の隣で明らかに自分を睨んでいるリョーマを見て、不二は黒い笑みを浮かべる。


「う〜ん…、来てるには来てたけど…一足遅かったか」

「な、何の事だよ?兄貴?」


相変わらず鋭い眼光のまま、裕太の胸倉をつかむ。


「裕太…?いくら可愛い弟でも…リョーマ君は譲らないからね?」

「そ、れはこっちの台詞だ!今まで散々独り占めしてきたくせに!」


二人の、対照的だがもの凄い剣幕に驚いたリョーマは、二人の服の端を掴んでいた。

途端に表情を変える二人。


「なぁに?リョーマ君vvv」

「どうした?リョーマ」

「ケンカ、しないで?不二先輩、俺…裕太と付き合うから…邪魔しないでね?」


可愛く上目遣いをされてはケンカも中断するしかなく、しかもその後の言葉に不二はショックを受けていた。


「へぇ…君たち付き合うんだ?…心外だなぁ、リョーマ君?愛する君たちの幸せを願う僕が、何で邪魔するのさ?」


((嘘だ!顔がめっちゃ怒ってるじゃん!!!))


「あ、兄貴…。これくらいで勘弁してくれよ…。リョーマも怖がってるし…」

「あれ?何でだろうね?大丈夫?リョーマ君」

「…平気ッス…」

「そう?良かった〜v」


白々しくも言葉を吐き捨てる不二に、二人は呆れるしかなかった。


「じゃ、俺そろそろ帰りますんで……」

「あ、俺送ってくよ。道分かんねぇだろ?」

「あ〜、うん。じゃあお願い」


仲良さげに会話する二人を見て、怒りのボルテージを上げる人物が一名。


「じゃあ、不二先輩・・・また明日」

「じゃ、送ってくるから…」

「うんvvvリョーマ君バイバイv」


その怒りを気付かせない辺り、やはり天才なのだろうか?


「裕太の奴…。帰ってきたらどうお仕置きしてあげようかなぁ…?」


















「あ、此処でいいよ。家あそこだから」

「あぁ、そうか。じゃあな…」


帰ろうとする裕太に、何故か寂しくなるリョーマは、腕を掴んでしまっていた。


「ど、どうした?」

「え?あ、いや、あの…これ、俺の携帯の番号とアドレス…。連絡ちょうだい」

「そういえばまだだったな。ほら、これ俺のだから」


短い沈黙が二人の間を通ると、お互いに自然とキスをしていた。


「ん…んぅ…」


裕太は口内の隅々まで舌を這わせると、ゆっくりと離れていった。


「じゃあな!メールするから!」


走り去って行く裕太の背を見送りながら、リョーマはある事に気がついた。


「あ…、煙草忘れちゃった…。ま、いっか」


きっと親父が煩いだろうなぁ…と思いながらも、自宅へ着くリョーマであった。









そしてその晩…不二家では裕太の苦痛な叫び声が響いたという。

それは不二の愛情一杯の激辛料理を食べたからか、はたまた精神的苦痛を味合わされたからなのか、それとも力で捻じ伏せられたのか…

裕太と不二のみが知る事件であった…






綺月「ふぅ…なんとか完成した」


裕太「これで完成なのか…。未完成じゃなくって?」


不二「裕太、そんな手厳しい事言っちゃだめだよ?こんなんで自己満足してる奴なんだからv」

綺月「自己満足しなきゃ小説なんか書けるわけないだろ〜?!少しは褒めてくれよ…」

裕太
不二「それは無理」

綺月「なんで?!」

不二「だって褒めるところがないし・・・」

綺月「…ぐっ…」

裕太「まぁ、こんな奴の駄文だけどさ・・・また読んでくれよな!」